今年度(2022年度)の院生一覧

今日は、今年度(2022年度)に高等教育学コースに所属している大学院生を紹介したいと思います。

 

M1 
  • 谭稚麒さん(タン・ジーチーさん)@佐藤研究室
M2
  • 岡田航平さん@佐藤研究室
D1
  • 佐藤有理さん@松下研究室
  • 八木理紗さん@佐藤研究室
D2
  • 大野真理子さん@佐藤研究室
  • 田中孝平さん@松下研究室
  • 袁通衢さん@田口研究室
  • 河野真子さん@佐藤研究室
D3
  • 岩田貴帆@田口研究室
研究生

 

こうやってみると、今年度は博士後期課程の人が多くて、修士課程の人が少ない傾向ですね。

僕(岩田)がM1で入学した2018年度は、僕を含めM1の同期が4人いまして、先輩のM2も3人でした。

新しくM1の方(もちろんD1からや研究生でも)が多く入ってくださったら嬉しい、という会話を院生室でしています。

高等教育学コースの受験を検討されている方は、ぜひご連絡いただければと思います(いきなり先生に連絡するのが躊躇われる場合は、われわれ院生にまず連絡をとっていただくのも大歓迎です)。

2022年度の「メディア係」を担当します、D3の岩田貴帆です。

こんにちは。

2022年度の「メディア係」を担当します、D3の岩田貴帆です。

 

過去の記事を遡ってみると、先輩(昨年のD3澁川さん)がメディア係になられたときに、ちょうど1年前の5月2日に年度の最初の記事が投稿されていました。

 

hegs-rakuyu.hatenadiary.org

 

僕は4月中、非常に慌ただしく、GWになったら院生ブログの更新を開始しようと思っていたのですが、先輩も同じようなタイミング感だったのかもしれません。

 

今年度は、各院生やOBの紹介などを中心に展開していこうと考えています。

また、ブログという形式では一覧性に欠けますので、形式にこだわらずに、高等教育学コースの研究活動を広く発信するために、いろいろな方法を模索していきたいと思っています。

取り急ぎ、就任(?)のご挨拶として。

今年度も「京都大学大学院教育学研究科 (中略) 高等教育学コース」をよろしくお願い致します。

 

【文系・学振採用体験記シリーズ:学振を通した学びと成長】④田中孝平(DC1)編

学振採用者に協力してもらい、これから学振を出そうとしている院生が抱える質問に回答していただくとともに、採用者自身の学振を通した学びを振り返ってもらう企画です。

学振の概要や他の体験記へのリンクは↓記事を御覧ください。

 

hegs-rakuyu.hatenadiary.org

 

 

この記事ではD1の田中さんの体験記を紹介します。

自己紹介

D1の田中孝平です。学振についてのリフレクションを行います!

採用年度:令和3年度
申請資格:DC1
書面合議・面接審査区分:社会科学
書面審査区分:教育学およびその関連分野
小区分:教育学関連
専門分野:大学教育学

研究課題名:高大接続に向けた高校の探究学習モデルの構築


申請しようか悩み中の人向け

1.DCに申請しようと思ったきっかけは?(検討段階で起こした行動があればそれも答えてください)

DCに申請しようと思った最大のきっかけは,自分の「研究者としての力量」を測るためです。M1のGWのときに先輩方がされていた学振申請書の検討会にオブザーブ参加させていただき,そこで学振という制度について詳しく知りました。学振に採択されることは,自分が研究者としてやっていくために必要なことだと理解し,申請を決めました。

 

2.申請書に記入できる業績が少なすぎて,出しても採用されないのではと二の足を踏んでいます。

業績欄が昨年度よりなくなりました。そこには,業績の有無によって採用可否を判定しないようにする学振側の意図が感じられると私は思っています。実際にネット上には,業績がほとんどないにもかかわらず,採択されたという事例も複数みられました。私もそれほど業績は多くありませんでしたが,業績が少ないことを悲観的に捉えるのではなく,自分が行ってきた研究を一つ一つ詳しく書くことができると捉え,それらを丁寧につなぎ合わせることを意識して申請書を執筆しました。

 

これから申請書類を書く&書いている人向け

3.申請書の構想に要した時間と,実際の執筆に要した時間はどれくらいですか?

申請書の構想は,1月から開始し,2月から3月にかけても引き続き構想を行い,毎日原則3時間以上の時間をかけました。なので,構想段階では180時間くらいの時間を要したと思います。そして,4月5日に構想に基づいた初稿を完成させました。そこから毎日ブラッシュアップの生活を繰り返し,毎日の研究時間のほとんどを学振の執筆に充てました。1日3〜5時間は執筆に充てたと思います。なので,執筆に要した時間は200時間くらいだと思います。学振にトータルかけた時間は400時間くらいだと思います。最終的に申請書はver.46まで書き上げました。

 

4.どの学問分野で申請しましたか?また、その分野で申請する際の注意点があれば教えてください。

社会科学の教育学分野。
自分が出す分野でどのようなテーマが採用されているのかを確認し,自分のテーマが合致するかを確認されるとよいと思います。また,「タイトルの書き方はこれでいいのか」などを確認することが必要だと思います。

 

5.個人的に一番ハードルになった要素や、負担であったことを教えてください。

一番ハードルになった要素は,「繰り返しを避け,短い言葉で相手に伝えること」です。学振の申請書は,分量に厳しい制限があります。「図表をどこで用いればよいか」「このセンテンス(情報)は必要か」「この接続詞は適切か」など,徹底的に表現面にこだわって書かないと採択されません。私もはじめは冗長な文章が多かったですが,何度も書くうちに文章が洗練されていき,徐々にハードルを乗り越えられた気がしました。

 

6. 申請書の作成をすすめていく中で,どのような人に協力を依頼したり、どのような資料を参考にしましたか?また,役に立ったことがあれば教えてください。

申請書の協力依頼は,自分の研究のことをよく知っている先輩から自分の研究のことをよく知らない他研究室の先輩など,多くの方に行いました。最終的には,合計10名くらいの方に見ていただきました。いろいろな方に申請書を見てもらうことで,多様な意見をもらうことができ,どんどん申請書がよくなると思いますが,迷ってしまうこともあると思います。自分のなかで大切にしている軸をブラさないことがポイントだと思います。

資料については,ネット上に公開されている申請書や先輩方の申請書がとても参考になりました。申請書を何度も読み込み,「どのようなレイアウトがきれいに見えるのか」,「どのようなレトリックが使われることが多いのか」などを一から徹底的に分析しました。そうすることで,質の高い申請書の特徴を整理し,それを全て意識しながら執筆することができました。まとめると,申請書のなかで使えそうな文章表現(構文)を暗記するくらい読み込むことをおすすめします。そうすることで,自然とわかりやすい文章が書けるようになるはずです。頑張ってください!

 

 

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以上、D1の田中さんからのご報告でした。

 田中さん、ありがとうございました!

 

【文系・学振採用体験記シリーズ:学振を通した学びと成長】③岩田貴帆(DC2)編

学振採用者に協力してもらい、これから学振を出そうとしている院生が抱える質問に回答していただくとともに、採用者自身の学振を通した学びを振り返ってもらう企画です。

学振の概要や他の体験記へのリンクは↓記事を御覧ください。

 

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この記事ではD2の岩田さんの体験記を紹介します。

自己紹介

D2の岩田貴帆です。この4月から学振DC2に採用いただきました。

採用年度:令和3年度
申請資格:DC2
書面合議・面接審査区分:社会科学
書面審査区分:教育学およびその関連分野
小区分:教育工学関連
専門分野:大学授業研究

研究課題名:学生の自律性を促す自己評価力を育成する教育方法の開発と効果検証


1度目の挑戦(M2の5月申請):令和2年度DC1→一次審査で不採用。
2度目の挑戦(D1の6月申請):令和3年度DC2→二次審査(コロナの影響で面接なし)で採用。

 

申請しようか悩み中の人向け

1.DCに申請しようと思ったきっかけは?(検討段階で起こした行動があればそれも答えてください)

制度の存在を知って(M1に入学する直前くらい)、すぐに出すことを決めました。日本の大学院生は基本的に授業料を払う立場ですが、研究することによって大学院生のうちからお金をいただける仕組みがあるというのはありがたいなと思いました。M1の5月に、当時M2~D2の先輩方が申請されるにあたっての申請書の検討会が実施されていて、勉強のために見学させてもらいました。そのことで、具体的なイメージをもつことができました。


2.申請書に記入できる業績が少なすぎて,出しても採用されないのではと二の足を踏んでいます。

それでも出すことをお勧めします。後述するように、申請書を書くことを通して、大学院生として成長することができるからです。また、業績が少ないことの理由が「すぐに研究成果が出るわけではない難しいテーマに挑んでいる」という理由の場合には、難しいが意義のあるテーマであること自体を丁寧に申請書で表現する、という方法もあると聞いたことがあります。
業績が少ないことの理由を自分で振り返ってみて、自分の力不足やリソース不足、ということが明確になるなら、今後の研究生活の見直しをすればよいわけです。このような場合でも、「自分がどこからきてどこへ行こうとしているのか」を言語化しようとして初めて「自分がいまどこにいるか」を深く認識することができると思いますから、「申請書を書こうとしてみる」ことは大学院生にとって重要だと思います。


これから申請書類を書く&書いている人向け

3.申請書の構想に要した時間と,実際の執筆に要した時間はどれくらいですか?

M2のときにDC1に申請した際は、1月から構想を開始して、2月3月は思うように時間がとれず、4月5月は頑張って毎日取り組みました。仮に1日平均2時間として、合計で120時間くらい、という感じですかね。で、DC1は全然ダメでした。

D1のときにDC2に申請した際は、2月から構想を開始して、毎週「執筆会」を田中くんと開催することで、忙しくても強制的に時間を作っていました。2~5月の間、ほぼ毎日取り組んでいたと思います。育児も始まっていたので、時間は細切れで、娘を抱っこで寝かしながらスマホで書いたりもしました。仮に1日平均1.5時間とすると、合計で180時間くらいといったところでしょうか。で、DC2は、二次採用となりました。


4.どの学問分野で申請しましたか?また、その分野で申請する際の注意点があれば教えてください。

1度目の挑戦:社会科学の高等教育学分野。
2度目の挑戦:社会科学の教育工学分野。教育工学という学問分野の範囲は広いのですが、その分、審査してくださる先生お一人お一人のお持ちである「教育工学とはこのような分野だ」というイメージも異なる可能性があると考えました。そこで、自分の研究テーマのどのあたりが教育工学的なアプローチなのかが伝わるように心がけました。

 

5.個人的に一番ハードルになった要素や、負担であったことを教えてください。

「自己評価力について研究することの意義」をわかりやすく書くことです。

「反転授業」「高大接続」「PBL」「主体的な学修態度」と聞けば、「ああ、あれね」とイメージがわくと思いますが、「自己評価力」と聞いても、ほとんどの方がピンとこないと思います。
でも自分はそれが大事だと心の底から思っていて、頑張ってその意義を申請書に書いて人に見せては全く伝わらず、とても悔しい思いをしました。
二次採用をいただいたDC2の申請書でも、それがうまく伝えられているとはいえない文章だったと思いますが、1度目のチャレンジよりは、わかりやすく書けるようになったという自信はあります。

わかりやすく書くために僕が気を付けたことは、「読んでいる人の認知状態を想定する」ということです。
例えば、「自己評価力の意義」を伝えるために、読んでいる人の既有知識と関連付けて書く、ということを心掛けました。自己評価力といきなり言われても誰もイメージがわかないと思いますが、「知識を活用して取り組む課題」とか、「自律的な学習」という用語から論をスタートすれば、審査してくださる先生方の既有知識と関連付けながら論を展開していけると考えました。

「読んでいる人の認知状態を想定する」ということを学振申請書を書くことを通して徹底的にトレーニングしたおかげで、論文などのライティング力がかなり上がったことは間違いないと思います。

 

6. 申請書の作成をすすめていく中で,どのような人に協力を依頼したり、どのような資料を参考にしましたか?また,役に立ったことがあれば教えてください。

参考になる資料については、大上(2016)『学振申請書の書き方とコツ DC/PD獲得を目指す若者へ』が最も体系的にまとまっている書籍だと思います。あとはネット検索で出てくるブログ記事や、大学主催のイベントなど、アクセス可能な情報源については、ひとつ残らず見たと思います。

 

※大上 (2016) は最近、改訂版が出たようです。

 

そして、一緒に申請書を書いている田中くん・研究室の先輩やOBの先生方・他大学の大学院生や先生など、合計7人の人に事前に申請書類を見てもらい、意見や助言をいただきました(2回目のチャレンジ)。


1回目のチャレンジでは、ver1.0についてA先生にいただいた意見を反映させてver2.0を作り、ver2.0についてB先輩にいただいたことを反映してver3.0・・・ということを繰り返していくうちに、どんどん内容が膨れ上がっていったり、方向性が定まらなくなってしまったり、という失敗がありました。
そこで2回目のチャレンジでは、「同じバージョンの原稿について多くの人から意見をもらう」という方針を最初に決めました。

具体的には、「4/30に初稿を完成させるので見てください」、と複数人の先輩・先生に予め依頼しておいて、5/1の陽が上るまでに送信して、GW中に添削してもらいました。
そして、改善したバージョンを5月下旬ころにもう一度複数人に見てもらって、仕上げる、という流れにしたのです。
こうすることで、添削してくださった方の意見に振り回され過ぎず、できるだけ客観的な視点から自分の申請書の改善点を見出し、最後は自分の責任で直す、ということができたと思います。

また、失礼にならないように、同じバージョンのものを複数の方に添削してもらっていることを予め先輩や先生に伝えることも忘れないようにしました。


まとめ

一次審査で採用が決まるほどの申請書を書けたわけではないことからもわかるように、僕はまだまだ修行が必要な大学院生です。
申請書を書く作業は非常に辛い時間でしたが、「自分がいまどこにいるかを知る」「伝わるように書く」トレーニングを通して大きく成長できたと思います。

学振特別研究員の制度には課題も多く指摘されているところですが、仕組みがあること自体は大変ありがたいことであり、また申請することが成長の機会になるという点でも有益と感じています。

今回のブログ企画の記事をご覧になった大学院生の方が、学振申請書と格闘する時間が少しでも有意義なものになれば幸いです。

 

 

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以上、D2の岩田さんからのご報告でした。

岩田さん、ありがとうございました!

 

 

【文系・学振採用体験記シリーズ:学振を通した学びと成長】②杉山芳生(DC2)編

学振採用者に協力してもらい、これから学振を出そうとしている院生が抱える質問に回答していただくとともに、採用者自身の学振を通した学びを振り返ってもらう企画です。

学振の概要や他の体験記へのリンクは↓記事を御覧ください。

 

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この記事ではD3の杉山さんの体験記を紹介します。

 

  

自己紹介

D3の杉山です。

採用年度:令和2年度
申請資格:DC2
書面合議・面接審査区分:社会科学
書面審査区分:教育学およびその関連分野
小区分:高等教育学関連
専門分野:高等教育学
研究課題名:大学教育におけるPBLの可能性と限界

 

申請しようか悩み中の人向け

1・DCに申請しようと思ったきっかけは?(検討段階で起こした行動があればそれも答えてください)

大学に在学しながら研究を進めていく上で、経済的な恩恵が大きいので申請しました。検討段階では、業績づくりのために発表や論文投稿を積極的に行うように意識していました。

 

2・申請書に記入できる業績が少なすぎて,出しても採用されないのではと二の足を踏んでいます。

採用されなくても、申請書を書く段階で他の院生や指導教員からコメントをいただけたので、自分の今後の研究計画を整理する上でとても有意義だと思います。自分も業績はそれほど多くなかったです。出しておいて損はないのでとりあえず出してみようという気持ちで出しました。


これから申請書類を書く&書いている人向け

3・申請書の構想に要した時間と,実際の執筆に要した時間はどれくらいですか?

採用されたDC2の時は、研究の構想を修士研究からの流れで日頃から考えていたので、申請書のためだけに考える時間はそんなになかったです。 DC1の時は、構想がまだ具体的ではなかったので、申請書を書くためにそれなりに時間を要しました。

 

4・どの学問分野で申請しましたか?また、その分野で申請する際の注意点があれば教えてください。

「高等教育学関連」で出しました。アーカイブでそれまに採用された研究のタイトルを見ていましたが「高等教育学関連」は新しい分野のようで、見当たりませんでした。ですので、注意点も具体的にはわかりませんが、高等教育学に貢献できる研究であることが伝わるようには意識して書きました。

 

5・個人的に一番ハードルになった要素や、負担であったことを教えてください。

3.でも答えた通り、DC2の時は、研究の構想を修士研究からの流れで日頃から考えていたので、申請書のためだけに考える時間はそんなになく、あまり負担に感じませんでしたが、研究の独創性や意義、インパクトを分かりやすく、どのように伝えるかなどを考えるのに時間を要しました。また、DC1の時は、初めて書くということもあり、そもそも何をどのように書けば良いのかを理解するのが大変でしたが、採用経験のある先輩が提出した申請書を共有してくださったので、それを参考にしてハードルを乗り越えることができました。

 

6・申請書の作成をすすめていく中で,どのような人に協力を依頼しましたか?また,もらってよかったアドバイスがあれば教えてください。

初めて申請したDC1の時は、指導教員の先生に加え、他の院生やゼミの先輩など広く意見をいただきました。一方、採用されたDC2の時は、指導教員の先生にだけご指導いただきました。自分は広くいただいた意見をまとめるのが苦手なのだと実感しましたが、これは個人差があるところだと思います。また、特にDC1の時は「これができたら研究として良さそう」という思いで書いていましたが、いただいたアドバイスを参考に、DC2の時は、申請する研究計画がいかに実行可能なものであるかを強調するように書き、「この計画通りに私は研究できます!」ということをアピールしました。

 

採用後のようす

7・採用以降の生活について教えてください。

研究のベースとなる文献が洋書のものが多く、図書館にも蔵書がないものがあり、採用以前は、閲覧するために生活費を削って購入するしかない状況でしたが、採用以降は、いただいた研究費により、研究に必要な文献などを入手することが容易になりました。そのおかげで、研究や論文の進捗速度や質が上がりました。

 

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以上、D3の杉山さんからのご報告でした。

杉山さん、ありがとうございました!

 

【文系・学振採用体験記シリーズ:学振を通した学びと成長】①澁川幸加(DC2)編

 

学振採用者に協力してもらい、これから学振を出そうとしている院生が抱える質問に回答していただくとともに、採用者自身の学振を通した学びを振り返ってもらう企画です。

学振の概要や他の体験記へのリンクは↓記事を御覧ください。

 

hegs-rakuyu.hatenadiary.org

 

 

この記事ではD3の澁川の体験記を紹介します。

自己紹介

D3の澁川です。

 

採用年度:令和2年度
申請資格:DC2
書面合議・面接審査区分:社会科学
書面審査区分:教育学およびその関連分野
小区分:教育工学関連
専門分野:高等教育
研究課題名:深い学習を促す講義映像・事前学習・対面授業を有機的に連関させた反転授業設計の提案

 

申請しようか悩み中の人向け

1・DCに申請しようと思ったきっかけは?(検討段階で起こした行動があればそれも答えてください)

DC1・DC2の申請で共通していることは、生活費と研究費を確保できる魅力です。

修士のときは働いていないことへの後ろめたさから博士課程への進学を悩んでいたこともありました。DCに採用されると生活費が工面できることは大変魅力的でした。

検討段階ではDC1のときに2つのことを行いました。

まず、博士課程へ進学をする覚悟を決めることです。旧友や恩師に不安を打ち明け、相談に乗ってもらいました。最終的に、自分がやりたいと思うことを信じてやれば良いということ、研究が好きと思えることは向いていることだという言葉をもらい、背中を押してもらいました。

次に、「学振の生活費だけでは足りない」という意見をネットで見かけていたので、本当に生活ができるのか計算しました。

結果、京都で暮らす分には問題なさそうでした。(東京だとなかなか大変だと思う…)

 

2・申請書に記入できる業績が少なすぎて,出しても採用されないのではと二の足を踏んでいます。

結論から申し上げると、出したほうがいいです。

今年から業績の欄が見直され、「研究に関する自身の強み」や「今後研究者としてさらなる発展のため必要と考えている要素」など、「研究遂行力の自己分析」を記述する欄に変わりました。大学内・外での経験や実務経験など、様々な強みをアピールする余地が増えたので、ぜひうまく活用してください。

単に業績数があるといいわけでもないと思われます。DC1では業績が無くとも採用された事例を聞きました。また、説明会などで学振の審査員を経験されたことのある先生のお話を伺っても、業績だけを見て可否を決める人はほとんどいらっしゃらないようでした。

そのため、申請書全体を仕上げていくことで補えうる悩みだと思います。

とにかく出してみましょう!出さないことには始まりません。

 

これから申請書類を書く&書いている人向け

3・申請書の構想に要した時間と,実際の執筆に要した時間はどれくらいですか?

構想と執筆を往還していたので区別は難しいですが、DC1のときは200時間以上は費やしたようにおもいます。

DC1では、3月から構想して書けるところから書いて埋めていきました。(着手が遅かったと思います。)時間をかける割に筆の進みが悪く、GWに学振検討会を通じて様々なフィードバックをもらってから、焦りながらギア全開で修正に取り組んだ記憶があります。

DC2のときは反省を生かして1月から草案に取り掛かりました。去年の申請書がたたき台となる分、執筆の大変さは軽減され、去年不採用だった原因分析や文章の精緻化に集中することができました。時間は曖昧ですが150時間以上費やしたように思います。

1日10時間執筆する日もありつつ、普段はなるべく毎日執筆することを心がけていました。〆切前は夢の中でも申請書を書くくらい考え続けていました。

 

4・どの学問分野で申請しましたか?また、その分野で申請する際の注意点があれば教えてください。

小区分は教育工学にしました。私の研究テーマである反転授業は「教育工学らしい」内容なので迷わなかったです。

近年の教育工学分野における採用者の傾向を見ると、開発研究が多い印象を受けます。

研究テーマによっては小区分に悩むかもしれませんが、過去に採用された研究題目を参考にすると良いと思われます。

 

5・個人的に一番ハードルになった要素や、負担であったことを教えてください

 答えとゴールのない作業をすること、それに耐えるメンタル維持が一番大変でした 笑

 学振では「これから」の話を説得的に述べる必要があります。

自分は何をしたいんだろう?それって意味あるの?誰のためになるの?それで本当にやりたいことがやれると言いきれるの?…など自問を重ねることは際限がなく、また、苦しみを伴うことです。

さらにその産みの苦しみを経て紡いだ言葉を必要最小限の文字数へ洗練化する作業も、際限がないですし、時間がかかるものです。

 

また、私はマネジメント能力が低い点も苦労しました。

DC1のときは申請IDや評価書の依頼がギリギリになり先生へ迷惑をかけてしまったり、

〆切10日前にコーヒーをPCにこぼして修理→MacからWinの代替機へ移行して書式崩壊、やり直し→Macが戻ってくるもまた書式が崩壊、やり直し→提出2日前からファイルを開くたびに書式がちょっとずつ崩れる謎のバグが生じる(Wordすら開けないときも多々あり) …という災難の連鎖に苦しみました。笑

申請書の作成では1行を捻出することに大変苦労するので、書式崩壊は咽び泣くような悲劇でした。

全てはゆとりのある行動をしなかったことに起因していたので、DC2のときはコーヒーを置く場所を変えるなど(笑)「必ずなにか起きてしまう」前提で物事を進めました。

 

クラウドは惜しみなく契約しましょう!(Dropboxが好きです。)

 

6・申請書の作成をすすめていく中で,どのような人に協力を依頼したり、どのような資料を参考にしましたか?また,役に立ったことがあれば教えてください。

まず、知り合いの学振採用者に連絡し、申請書を共有してもらいました。

他分野の申請書も見させていただけたのですが、この経験がとてもよかったです。専門的な内容はわからずとも言っていることがわかる、「誰にでもわかる」申請書を共有していただけたからです。

作成中は、共有していただいた申請書をなめるように読みました。フォントサイズや図表の作り方、ロジックの展開など、読むたび新たな発見がありました。

 

次に、研究室の先輩や大学の研究員、先生方に添削を依頼しました。

ロジックで不十分な点から表現が曖昧な点まで、様々な粒度のフィードバックを頂きました。依頼した先輩や先生方のフィードバックなしには仕上がらなかったと思います。

 

役に立ったことは、「猿でもわかるように書く」「隠れた前提を飛ばさず説明して書き進めていく」ということです。前者はシンプルですが、大変難しかったです。他分野の申請書がとても参考になりました。

後者は先輩からのフィードバックで学んだことで、論文執筆にも通じる重要なことだと思います。

 

なお、学振を執筆するための書籍(岩田さんも紹介している大上先生著書)やブログを参考にしました。

個人的には、KURAが提供している情報や説明会が参考になりました。

www.kura.kyoto-u.ac.jp

 

大学内外で提供されている情報と、採用された申請書(実物)を多く見ることを推奨します。 

 

採用後のようす

7・採用以降の生活について教えて下さい。

まず、研究費と生活費をいただけることが本当にありがたいです。機材や洋書、事典など高い買い物をできることには感謝しかありません。

金銭面以外では、事務処理の経験を積めました。経費処理の流れを知ったり、研究遂行費管理に気を配ったり(Zaimで「研究遂行費」や「立て替え払い」のカテゴリを作り管理していました)、論文の納期が年度をまたがないか意識するなど(笑)実務的なことを学べました。

また、研究で行き詰まったときに申請書が立ち戻る原点となっています。

申請書に時間をかけた分、それは(採用の如何に関わらず)その後の自分を導く材料になるので、いま執筆している人は必ず次に繋がると信じて、がんばってください!

 

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以上、D3の澁川でした!

 

 

 

【文系・学振採用体験記】学振を通した学びと成長

こんにちは。メディア担当になりました、D3の澁川です。

今回は、学振採用者に協力してもらい、これから学振を出そうとしている院生が抱える質問に回答していただくとともに、採用者自身の学振を通した学びを振り返ってもらう企画を考えてみました!

学振の概要を説明した後に、文系(いずれも高等教育学コースに所属)4名の採用体験記のリンクへつなげます。

これから学振を執筆しようとしている人の参考になれば幸いです!

 

学振ってなに?DCってなに?

今回取り上げる学振とは、独立行政法人日本学術振興会」が提供している特別研究員制度のことを指します。

特別研究員制度とは、「我が国の優れた若手研究者に対して、自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与え、研究者の養成・確保を図る制度」です。

 

特別研究員の制度にはPD、RPD、CPD、DC2、DC1があります。

大学院在学中に関係するのがDCです。

DC1とDC2の違いは、申請時期です。

DC1:M2の春に申請→M2の秋に採用可否がわかる→D1の春から「特別研究員DC1」として採用

DC2:D1orD2の春に申請→D1orD2の秋に採用可否がわかる→D2orD3の春から「特別研究員DC2」として採用

仮に修士→博士とストレート進学する場合、合計3回DCに挑戦できます。

この企画ではDC1とDC2の採用体験記を紹介します。

 

学振のいいところ

学振の主な特徴は次の通りです。

毎月20万円の研究奨励金(=生活費)と、年間最大150万円の研究費をもらえる

まず金銭面ですが、採用されると毎月20万円の生活費+研究費を支給してもらえます。

生活費の確保は多くの人にとって重大な問題だと思います。

学振に採用されるとアルバイトをする必要が減り、研究に専念することができます。

博士後期課程の進学を目指す人の多くは周囲がすでに働いている人が多いと思うので、生活費が確保できることは、精神衛生上も大変良いです。

※詳しくは募集要項を確認してください。

https://www.jsps.go.jp/j-pd/data/boshu/dc_yoko.pdf

 

※以前までは学振以外からの報酬受給について厳しかったのですが、今年度から規制緩和されました。「特別研究員遵守事項及び諸手続きの手引」を参考にすると良いです。

「研究遂行費の申請」など減税に関係する制度も手引きを要確認。

www.jsps.go.jp

修正箇所の資料もわかりやすい。

https://www.jsps.go.jp/j-pd/data/tebiki/r3/r3_henko.pdf

 

若手研究者のキャリア形成にとって花形である

次に、アカデミックキャリアに箔をつけることができます。

学振に採用されると「日本学術振興会特別研究員(DC2)」のように、職歴に記載できます。

そのため、CV(履歴書)上で自分の研究能力をアピールする材料にもなります。

また、学振は様々な学問分野の登竜門的存在ですので、他分野の研究者から研究能力を認めてもらいやすい利点もあります。

 

申請書執筆から採用までの大まかなスケジュール

学振が提示しているスケジュールと執筆に向けたスケジュールをざっくり合わせてみました。

  • 1月以前:積極的に学会発表や論文投稿を行う。
  • 1月:執筆の構想を考え始める。
  • 2月:募集要項・申請書作成要領・申請書様式が公開されるので、確認する。
  • 申請書の執筆開始。指導教員に申請の意思を伝える。(他大学に申請する人はその受入教員に連絡)
  • 2〜3月:申請書の初稿完成目標。大学によっては学内で学振説明会が開催される。
  • 4月-5月:受け入れ研究機関から申請IDを取得。教員に評価書作成の依頼および評価書の作成。申請書を何度も修正し精緻化する。
    ※大学によりID発行や評価書・申請書提出の〆切が異なるので要注意
  • 5月中旬:学内・事務チェック〆切(※京大の場合。希望者のみ。)
  • 6月上旬:学内・申請書提出〆切(※大学によって学内〆切が異なるので要注意。京大は学内〆切遅め。)
  • 6〜9月:審査結果を待つ。
  • 10月上旬:第一次選考・審査結果の通知。
  • 11-12月頃:面接試験or書類審査による第二次選考の実施
  • 1−2月頃:第二次選考合格者や補欠合格者への合格通

 

何を書くの?

フォーマットは年により変化しますが、おおむね

研究の背景と位置づけ、研究の目的、研究計画、研究の意義やインパクト、研究倫理の遵守、業績など自身の研究遂行力の説明、目指す研究者像

などを記述します。

 

なお、今年度の申請書は項目が大きく変わりました。各自確認しましょう。

www.jsps.go.jp

個人的には、今年度の申請書で

  • 必ずしも過去にやっていた研究の続きをやることを前提として書かなくてもいいような項目になっているため、多様な研究のバックグラウンドを持つ人が書きやすくなった
  • 「業績」の欄が見直され「研究遂行力の自己分析(研究に関する自身の強み、今後研究者としてさらなる発展のため必要と考えている要素)」という項目に変わり、業績数など量的な指標ではなくその質を重視することが強調された

点が印象的でした。

業績などわかりやすい指標以外で自身の専門性や研究の強みを自由に表現できることは良いことですね。

 

採用体験記を見てみよう

ここまで学振の概説をしてきました。

以下の記事では、これから学振を出そうとしている院生が抱える質問に回答していただく形で、採用体験記を執筆してもらいました!

十人十色もとい四人四色なエピソードを見られるので、ぜひ御覧ください!

 

 

 ①D3・澁川幸加(DC2)

hegs-rakuyu.hatenadiary.org

 

 

 ②D3・杉山芳生(DC2)

hegs-rakuyu.hatenadiary.org

 

 ③D2・岩田貴帆(DC2)

hegs-rakuyu.hatenadiary.org

 

 ④D1・田中孝平(DC1)

hegs-rakuyu.hatenadiary.org